体験談(約 33 分で読了)
僕と亜樹......白い世界に、二人の情熱。《完》(1/5ページ目)
投稿:2020-02-16 12:13:18
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初めての投稿です。読みにくかったらすいません。長いので、時間がある時にゆっくり読んでいただければと思います。そんなに遠くない、最近の思い出です。僕は初めての恋で自分の性癖を知る事になりました。小、中、高校とずっと机に向かっていた為、友達もかなり少なかったのです。そ…
その日は、冬の季節とは思えないほど暖かった。連日続いていた雪が嘘のようで、かんかん照りの太陽が晴天の空の中一際目立っていた。会社に向かう人達は、厚手のコートやスーツのジャケットを脱ぎ、タオルやハンカチで額を拭っている姿も見える。冬らしい服装と、ギュウギュウ詰めの満員電車、そしてこの季節外…
その約束の日、目的地に着いたのは朝のこと。僕と亜樹は三連休を利用してスキーにやって来たのだった。
都会から離れ、レンタカーを北に走らせること数時間。九時頃だった。スキー場に到着すると、そこは見事なまでの銀世界。僕は車から降りると、繰り返し深呼吸をした。
山の空気は澄んでいて、呼吸をする度に体の中を浄化してくれるような気持ちよさを感じた。
しかもありがたいことに、天気予報では連休も含めて数日は晴れが続く見込みだった。
雲一つない真っ青な空と、キラキラと光がちりばめられた雪景色。そして、この世界のヒロインである素敵な妻。最高のシチュエーションだ。
僕は、ロッジの入り口横にある三人掛けのベンチに座りながら、一人でニヤニヤと待っていた。
しばらくすると、入り口のドアが開き、上部にぶら下がっている鈴がチリンチリンと音を鳴らすと、ロッジからヒロインの妻が顔を覗かせた。
亜樹「レンタルできたよ!早く中に入って!」
楽しみで仕方ないのか、亜樹は僕を急かした。
道流「はいはい」
やれやれといった雰囲気を醸し出していたが、そんな僕も、内心は亜樹同様にワクワクしていた。
僕は生まれも育ちも都会だったので、スキーを一度も経験したことがなかった。反対に亜樹は雪国育ち。スキーもスノーボードもお手のもの。今日は亜樹がコーチとなり、僕に手取り足取り指導してくれるそうだ。
亜樹「よっしゃあ。じゃあ行くか!」
ブーツを履き終えると、亜樹はスキーセットに手を掛けながら男らしい口調で言った。
白のニット帽とゴーグル。上着は白がベースで、ピンクや青、緑の花が細かくデザインされている。そしてズボンは黒。
今日のために、亜樹が連日デパートに赴き買って来たのだ。
道流「ねぇ亜樹、でもさ、なんでペアルック?ちょっと恥ずかしくない?」
何故か全身お揃いのペアルックとなった。
亜樹「なんで?だって夫婦なんだからいいじゃん。それに、端から見たらラブラブのアッツアツだよ?あっ、どうしよ!私達の熱で雪が溶けちゃったら......困っちゃう〜」
まだ一滴もお酒を飲んでいないというのに、亜樹は酔ったときと同じテンションになっていた。でも言い替えれば、それだけ上機嫌ということ。僕は少し恥ずかしいけど、亜樹が笑顔で楽しんでくれればそれでいいかなと思い、納得した。
道流「そしたら、二人で謝らなきゃね」
亜樹「違う、怒るんだよ。こんなにラブラブな夫婦にした神様に。溶けちゃったのはあなたのせいだよって」
道流「はははっ。ありがたいことにね」
亜樹「うん。よし!準備完了。ほら!行こう道流」
亜樹は照れた顔を見せながら、僕の手を取った。
―――
ゲレンデは、やはり連休ということもあってなかなかに混雑していた。
初級、中級、上級者とコースは分けられていたが、特に中級者コースは麓から見ただけでも人がごった返しているのがわかった。
幸いなことに僕達が滑る初級者コースは、さほど、といったところだろうか。
亜樹「初級者コースは道流みたいに初めてだったり、滑るのが怖かったりする人が行くところだから斜面もなだらかでゆったりしてるよ。最初は怖いかもしれないけど、安心していいからね」
リフトを待っているとき、僕が不安にならないように亜樹は励ましてくれた。
道流「うん。ありがとう亜樹。でも僕は全然怖くないよ。だって、亜樹が教えてくれるんだから」
僕は亜樹の顔を覗き込むように言った。
亜樹「ありがと。でも教え子が道流だから、覚えがなぁ〜」
まるで、僕の覚えが悪いみたいな言い方をして目を合わせた。
道流「失礼だね。僕は尻上がりなだけだよ」
亜樹「ふーん。じゃあ覚える前に日が暮れちゃうね」
亜樹は意地悪な笑みを浮かべた。
道流「ほっとけ」
僕はそう言いながらおかしくなって笑ってしまった。
順番が回ってくると、亜樹に教えられた通りにリフトに乗った。
高さは五メートルくらいだろうか、すぐ隣に中級者コースがあって、僕はその様子を見下ろしていた。
ゲレンデには冬の女王の曲がBGMとして流れていて、それに合わせるかのように、子供から大人までがコースを滑り下りて行く。
中にはカップルだろうか、彼女に手を引かれながら、恐る恐る彼氏が滑っている。僕はその様子が微笑ましくて、自然と笑みがこぼれた。
亜樹「これからの私達みたい」
隣に座っている亜樹が、僕の視線の先に気づいたのか声を漏らした。
道流「二人は微笑ましいけど、僕の場合は酷くて笑えないかもね」
亜樹「確かに」
道流「いやいや、否定してよ」
亜樹「いやいや、できないでしょ?」
そう言われ、僕は天を仰ぎ、
道流「......確かに」
僕達は笑い合った。
リフトに乗って数分。亜樹の合図で下りると、さっそく初級者コースに向かいスタート地点に着いた。
そして、僕達はその絶景に一つ、大きな白い息を吐いた。
亜樹「綺麗だね」
僕の気持ちを代弁するかのように、亜樹が一つ言葉を空に放った。
視線の先には、山々の隙間から街が見えていて、今日という澄んだ天気のおかげで、見事なまでの青と白の世界になっていた。
僕は、その吸い込まれそうな光景に感慨深くなった。
道流「本当にそう思う。なんか、ずっとここにいたくなる感じ」
見据えたまま言った。
亜樹「うん。私も感じる」
二人で顔を見合せると、照れ笑いをしてしまった。
亜樹「よし!じゃあゆっくり行くからね。まずは基本姿勢から」
道流「よろしくお願いします!」
―――
それから二人だけのレッスンが始まった。
スタート地点から麓までは、亜樹の言うようになだらかな斜面が続いていて、恐怖心はまったくなかった。
そのため、亜樹の一つ一つの動作や言葉に気兼ねすることなく集中できた。
亜樹「そうそう。八の字にして......」
亜樹は僕の進行方向を塞ぐようにして滑っていた。
確かに人はまばらだし、斜面はゆったりとしてはいるけど、前方に背中を向けながら、ましてや僕を見て指示を出し、後ろを確認しながら滑っているのだ。本当に亜樹は凄い。
亜樹「いい感じだよ。それで、もし危ないと思ったら、わざと体を倒して止まるのも大事だからね。こうやって」
僕を制止させると、亜樹は隣に来て周りを確認してから、板を揃えて横に倒れた。
亜樹「それで起き上がるときは、まず板の位置と角度を確認すること。ゆっくり落ち着いて、深呼吸してからでもいいよ。足を動かして直したら、板を横向きに立てて、前後に揃える。お尻を板に近づけて、手やストックを使いながら体を戻す」
亜樹は馴れた様子で体を起こした。
亜樹「どう?できそう?」
ウェアに着いた雪を払い落としながら言った。
道流「うん大丈夫だと思う」
亜樹「よし。じゃあ後少しで下に着くから、そしたら倒れてからの起き上がりを練習しましょう」
亜樹は麓に指を差しながら言った。
ゴーグルで隠れているけど、亜樹の口調からは楽しさが伝わってくる。
そのあと基礎練習を繰り返し、あらためてリフトに乗って、初級者コースのスタート地点に戻った。
一時間ほどの練習だったが、さっそく成果が出たのか、難なく下りて来ることができた。
道流「どう亜樹?もう完璧でしょ?」
僕はゴーグルを外すと、ドヤ顔をして問いかけた。
すると、亜樹もゴーグルを外して、
亜樹「ダメ!調子に乗らないの!そうやって勘違いすると怪我に繋がるよ。始めたばかりなんだから、まずは謙虚に基礎練!」
亜樹は強い口調で言った。
亜樹「怒るのはちゃんと理由があって、私だって気を抜けばすぐに怪我をするし、何よりも、自分の驕りで周りの人を巻き込む可能性もあるからね。だから気をつけないといけないんだよ」
亜樹の言うことは至極真っ当だった。
道流「わかった。あらためて指導をお願いします!」
僕は学生時代を思い出しながら、一礼した。
亜樹「よろしい!それじゃあまた、リフトに乗ろっか」
僕は亜樹の指導の元、ふたたび基礎練習に勤しんだ。
そして、かんかん照りの太陽が頭上に高くなってきた頃、お腹からグーと空腹を知らせる音が聞こえ、二人でロッジにあるレストランへと入った。
道流「うーん。やっぱりラーメンか......」
僕はテーブルに置かれているメニューを見ながら呟く。
亜樹「海に来てるんじゃないんだから。スキーって言ったらカレーでしょ」
亜樹はメニューの真ん中を指で差した。
道流「そうなの?でもやっぱり、寒いときはラーメンが一番だよ」
亜樹「じゃあ道流がラーメンで、私がカレーね」
しばらくすると、テーブルには料理が並んだ。
ラーメンのスープを一口すすると、冷えた体に染み入るようだった。
道流「あー美味しい。そっちのカレーはどう?」
亜樹「うん。美味しい。一口食べる?」
道流「食べる食べる!」
亜樹はカレーをスプーンで掬うと、僕があーんと開けている口に入れてくれた。
道流「......うん!美味しい!」
僕は目を見開き、興奮しながら答えた。
亜樹「ねっ、だから言ったでしょ?これだからスキー場のカレーはやめられないのよ」
僕達は至福の時間を、お互いに食べさせあいっこをしながら過ごした。
―――
午後になると、人々が三々五々ロッジから出ていった。
亜樹「ちょっとタイミングをずらさないといけないかもね」
亜樹はその人達を見ながら苦笑いをした。
道流「......ねぇ亜樹。少し雲ってない?」
僕は窓の外を見上げながら訊いた。
先ほどまでの快晴とは打って変わって、どこか怪しげな雲行きになっていた。
亜樹「あらら。まあ、山の天気って変わりやすいからね」
僕の言葉に、亜樹も窓の外を見てため息をついた。
道流「大丈夫かな?」
亜樹の顔をうかがった。
亜樹「今日じゃなくても、明日があるしね。それに、このあとはいっぱいお酒が飲めるし......楽しみ〜」
すでに笑みがこぼれていてヨダレが垂れそうだ。まるで魚料理を目の前にした美雪を見ているようだった。
道流「いつもならここでほどほどにって言う僕だけど、今日は大目に見てあげよう。それにきっちり付き合うよ」
亜樹「ありがとう。でも数日は晴れが続くから、今日はもう帰って早めにお酒を浴びようか?」
亜樹はおちょこを持つポーズをした。
道流「言い方。さすがにまだ早いよ。もうちょい様子を見ようよ」
亜樹「うん、それでもいいよ。それじゃあ中級者コースに気張って行こうか」
ロッジを出ると、僕達はリフトに乗り山を登った。
リフトの乗り降りも馴れたもので、すでに亜樹の合図を待たずに自分から降りられるようになった。
道流「ほら早く」
僕が振り向きながら亜樹に声をかけた。
すると、亜樹はゴーグルを外した。
亜樹「道流!気をつけないと......」
道流「ごめんごめん。気をつけるよ」
僕は話しを遮り、先回りするように謝った。
亜樹は不安そうな瞳を向けて、ふたたびゴーグルを着けた。
板を交互に滑らせながら移動して、先ほどとは違う所にやって来ると、景色は一変していた。あれだけ奥深くまで続いていた二色の様相も、空の天気の変化に一色となってしまった。
かろうじて街は見渡すことができるのだが、どこか味気なない。
道流「亜樹よろしくね」
このとき、僕は浮かれていた。
亜樹「初めてのコースだから、ゆっくり行くよ」
そう言いながら、亜樹は僕よりも三歩先を滑り出した。
亜樹「私の背中について来てね」
亜樹の言葉に続いた。
初級者コースよりも傾斜が鋭くなっていたので、気づかないうちにスピードが上がっていた。
僕は少し焦りながらも、とっさに板を八の字にして安定させた。
亜樹「そうそう。落ち着いてね」
亜樹は細かく振り向き、僕の様子を確認した。
しかし数十メートルも進むと、だんだん気持ちが昂ってきてしまい、僕は勝手にスピードを上げた。
道流「どう亜樹!もっと行けそうだよ!」
先を滑っていた亜樹に追い付くと、僕は自信あり気に言った。
亜樹「調子に乗らないの!」
道流「大丈夫だよ!」
周りのスキーヤーに触発されたのか、僕はさらに前に出た。
亜樹「あっダメ!その先は......」
亜樹の声が聞こえたときには、僕の体は宙に舞っていて、そのままコース横のロープをすり抜け茂みに突っ込んだ。
僕は何が起きたのか理解できず、ただただ唖然としていた。
亜樹「道流!」
亜樹が心配そうな声を出しながら滑り寄って来た。
亜樹「大丈夫!?痛いところとかない!?」
道流「うんなんとか。ちょっとびっくりしちゃったけどね。何がどうなったの?」
僕は上半身を起こすと問いかけた。
亜樹「数メートル先に一ヶ所だけ膨らみがあったんだよ。道流はスピードが出てたから、それに乗ってジャンプしちゃったの」
道流「そうだったんだ」
すると亜樹は、ゴーグルを外して、
亜樹「バカ!だから言ったでしょ!」
その声は、周りの人達の視線を集めた。
道流「......ごめん。調子にのって」
冷静になってくると、頭の中に直前の光景が蘇ってきて、自分の体が小刻みに震えているのに気づいた。
亜樹「本当に......。どのスポーツも同じだと思うけど、怪我って怖いんだよ?だからこそ、基礎をしっかり身に付けて、準備をしないといけないの」
道流「そうだね」
亜樹の言葉に恥ずかしくなった。
その後はあらためて、亜樹の指示に従いながら麓まで下りて来た。
しかしそのタイミングで、やはりというか、さらに雲行きが怪しくなった。腕時計の針が十五時を指したところだった。
亜樹「そろそろ、かなぁ」
亜樹は空を見上げながら、残念そうに言った。
道流「でも、これからコテージに向かえば、ちょうどいいんじゃない?お風呂入って、すぐご飯だよ」
すると、亜樹の瞳が輝いた。
亜樹「日本酒!熱燗!もう我慢できないっ!行こう道流!」
亜樹は僕の腕を掴むと、ロッジに引っ張り込んだ。僕はやれやれと思いながら、スキーセットを返却すると、車に乗り込みスキー場を後にした。
―――
車を走らせ一時間ほどが経った頃に、僕達は宿泊先に着いた。
外見はログハウスのコテージ。その建物が幾つかあってそれぞれに宿泊ができる。
僕と亜樹は車を止めて、さっそく受付を済ませると、コテージに向かいオーナーからの説明を受けた。
「では、ごゆっくり」
髭を生やした渋い顔のオーナーが、笑顔で軽く会釈をすると部屋から出ていった。
道流「いい雰囲気だね」
僕は十二畳ほどの部屋を見渡しながら、荷物を整理している亜樹に声をかけた。
亜樹「ね。でも、私は懐かしい気分だよ。小さい頃はいつもこんな感じだったから」
道流「え?家がってこと?」
亜樹「ううん。年に数回だけど、友達家族とスキーに行ってさ、それで別荘に泊まるの......楽しかったなぁ」
亜樹は自然と笑みがこぼれていた。
道流「友達って、女の子?」
亜樹「ふふ。気になる?」
道流「......まあね」
僕はいぶかしげに頷いた。
亜樹「女の子だよ。いつも三人で遊んでて、凄い仲良しだったんだ」
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(2020年05月28日)
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