それは、梅雨の晴れ間だった。午前中の蒸し暑さが嘘のように風が涼しく、玄関先の紫陽花がどこか気怠そうに揺れていた。
チャイムが鳴ったのは、昼を少し回ったころだった。
ドアを開けると、そこに彼女がいた。黒髪を一つに束ね、白いカットソーにベージュのスカート。銀行の制服ではない。少し戸惑うような笑みを浮かべながら、彼女は言った。
「ちょうど近くに来たもので…あの、投資信託の件で、少しだけ」
軽く頭を下げながら、鞄を抱える手の指先がかすかに震えていた。僕の胸にも、理由のわからないざわつきが生まれる。
「どうぞ」
通されたリビングで、彼女はスカートの裾を丁寧に整えて腰を下ろした。僕が持ってきたアイスティーに口をつけ、喉を鳴らす仕草がどこか艶めかしい。その首筋に、微かに汗が光っていた。
「暑くなりましたね」彼女の視線が、ふとカーテン越しの日差しに向く。その瞬間、カットソーの胸元がわずかに緩み、白いレースのブラの縁が覗いた。
意識しないふりをしても、目は離れなかった。シャツのときはわからなかったが、柔らかな膨らみがはっきりと形を主張していた。控えめな呼吸にも揺れ、陽の光を受けて、瑞々しさを帯びていた。
「資料、これなんですが……」彼女が鞄から取り出したファイルを、僕の膝の上にそっと置く。その動作で、彼女の体がわずかに前に傾き、胸元がまた大きく開いた。
「すみません、こんな日に押しかけてしまって」微笑んだその瞳は、どこか濡れていた。
言葉を探しながらも、僕は彼女の視線から目を離せなかった。
僕はファイルを受け取りながら、彼女の指先がふと触れたことに気づいた。柔らかく、けれど芯のある温もりだった。彼女はすぐに手を引いたが、その動きに一瞬のためらいがあったように見えた。
「このプランですと、リスクはやや高めですが……」彼女は資料を指さしながら説明を始めたが、僕の耳には言葉よりも、彼女の息遣いや、膝元からふわりと漂う石鹸の香りのほうがはっきり届いていた。
僕は思わず口を開いた。「…よかったら、もう少しゆっくりしていきませんか?」
彼女は言葉に詰まり、軽く目を見開いた。が、すぐに口元を和らげてこう答えた。
「…少しだけ、なら」
そして、少しソファに身を預けるように座り直した。それまで姿勢を保っていた胸元が、重力にしたがってわずかに沈む。レースの縁がさらに覗き、ふくらみの輪郭がはっきりと浮き上がる。
僕は冷蔵庫から冷たいフルーツを運び、彼女の前に置いた。
「ご家族、お留守なんですか?」と彼女が尋ねる。「ええ、ずっと一人です」「…静かで、いいですね」
そのとき、彼女の指が、グラスに残る水滴に触れて滑った。「…あっ」不意に手元の資料がテーブルから落ち、僕がかがんで拾おうとした瞬間――
同時に彼女も前屈みになり、僕らの額がわずかにぶつかった。
「…ごめんなさい」「いえ、僕こそ…」
近い。
顔の距離が、息が混じるほど近い。そして彼女の胸元は、もう目の前だった。一枚の布越しにある、熱とやわらかさと、胸の谷間。押し寄せるような香りに、僕は目を伏せた。
「…暑いですね」彼女はそう言いながら、額にかかった前髪を指で払った。その仕草は、まるで見せることを意識しているようだった。
沈黙が、二人の間に流れる。だが、不快ではなかった。むしろ、心地よい緊張に包まれていた。
シーツに沈み込むように、ふたりの体が重なった。
彼女の唇は、思ったよりもやわらかく、わずかに湿っていた。そっと舌を這わせると、彼女は息を止め、そして震えるようにそれを迎えた。唇の端から、微かに甘くくぐもった香りが立ちのぼる。それは午後の紅茶に溶けた蜜のようでいて、もっと濃密で、どこか淫らだった。
胸元に手を伸ばすと、彼女は抵抗しないまま、シャツの前をはだけさせた。布地の奥に現れたそのふくらみは、掌に余るほどの重みと弾力をもっていた。指先が先端をかすめると、彼女は小さく身体を跳ねさせた。
「…そこ、感じちゃうんです」
まるで告白のように、声が漏れる。それに応えるように、舌でその頂をゆっくりと転がした。甘く、柔らかく、そして形のよいその先は、想像以上に反応がよかった。
彼女の吐息が耳元にふわりと触れるたび、僕の中にある何かがひとつずつ、理性から本能へと溶けていった。
スカートの中にそっと手を滑り込ませる。指が太腿をなぞり、ショーツの脇へとたどり着くと――そこはもう、しっとりと熱を帯びていた。まるで濡れた花びらのように、そこは僕を待っていた。
「…だめ、そこ……」
声ではそう言いながらも、脚は閉じるどころか、わずかに開かれていく。小さく、か細い声が、喉の奥から漏れていた。
彼女の動きは、初々しいのにどこか誘うようで。目を合わせると、頬を赤らめて、でも視線は逃げなかった。
スカートをたくし上げ、身体を抱え上げるようにして彼女を迎え入れると、彼女は僕の胸に顔を埋め、肩を震わせながら、そっと腰を落とした。
「……おっきい、ですね……」
その一言は、僕の中の抑えを最後までとかしきった。だが、激しさに飲まれるのではなく、その感触を確かめるように、互いの動きは静かに始まり――そして徐々に、熱を帯びていく。
吐息、濡れた音、微かな香り、交わるぬくもり。そのすべてが、午後の部屋を包み込んでいた。
-終わり-